DoubleMintGum

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香港で『藍宇』の日々

★2001年11月28日

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 TOKYO FILMeXで『藍宇』を見て以来、頭の中は『藍宇』でいっぱい。

ああ、また見たいもう一度見たいもっと見たいかなり見たい。

渡りに船というべきか、以前から計画していた香港行き。なんと丁度11月22日から香港で『藍宇』上映しているではないか。『藍宇』よ、君はやはり我の運命の相手だったのだな。
今回の香港の旅、すなわち『藍宇』の旅に決定。


 さて、行きの飛行機の中で見た新聞ではおおむね評判のいい『藍宇』。

しかも限定版ポストカードセットというのを、各映画館の窓口で販売しているというので気が焦る!!!つーか、売り切れる事は無いと思うのだが一人焦る。
そしてこの日は油麻地の百老匯戲院で午後7:45の回を見る。

念願のポストカードセットも購入。7枚セットで30HK$也。美麗。

売り上げは智行基金へのチャリティーに回されるそうである。

戲院内は結構混んでたねー。意外。圧倒的に男性二人連れが多いっす。そしてみんな本気(と書いてマジ)で見てます。ラストシーンで「え!」と息をのむ声があちこちから聞こえてきたけど、私はその5分前から泣いてたよ。2回目だからか、随分短く感じられた。原作を読んでる人が「まるでダイジェスト版のようだ」と言う気も少し分かるが、やっぱこの映画が大好きだなあ。初回見た時より音楽に心打たれました。そう、音楽は張亞東だもんね。でもついつい中文字幕を読んでしまう自分。セリフが普通話だからさ、全然判らないよ。しかしこのセリフがなかなか美しいよ、泣けるよ。
 男女でだったら吐いて捨てるほどあるこのテのメロドラマを、待ち望んでいた人がどれだけ多いかってことで、今『藍宇』が熱い!と確信。

★11月29日

香港なのに韓国映画ばかりをやっている。

『吠える犬は噛まない』とか『私にも妻がいたらいいのに』とか『リメンバー・ミー』とか『春の日は過ぎゆく』とか。タイ映画の『怪盗ブラックタイガー』も。

まるで遅れてきた東京国際映画祭とFILMeXみたいだ。

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油麻地の百老匯戲院で『春の日は~』を見て、ユ・ジテの笑顔に清い涙を流した後は、尖沙咀の港威戯院の午後7:45の回へ行った。
『藍宇』です、当然。何故かチケット買う時やたらと「一人?一人なん?」と聞かれた。他にもおるやん、そんなの。あ、それとも私が18歳未満に見えたのかなあ。おお、今夜も同志(と思われる)二人連れが多いです。好浪漫だな。混んでるぜ相変わらず。
しかし、しかしだ!最悪の自体が起きた!上映開始後、絡みのシーンになった途端「いーー!気持ち悪い!」とゲラゲラ笑い出すバカ二人。呆れ返る場内。
頼む、君たち帰ってくれたまえ。とにかくこのくそバカたちには皆「黐線!」と舌打ち連発。大変迷惑したね。てめえらのやってる事のほうがよっぽど気持ち悪いんだよ。ああ集中出来ない!イライラする!
 百老匯戲院あたりだときっちり最後まで見せてくれるのだが、ここは普通の香港の映画館的に「完」の字が出るか出ないかのうちに場内明るくなってしまった。しゃーない帰るか、出口はスクリーンの横にあるので前へと歩き出す私達は何故かその場を立ち去りがたい気分で、わらわらとスクリーン前で立ち止まり、まだ黄品源の主題歌『你怎麼捨得我難過』とテロップが流れる画面をしばし見つめていたのだ。
怪我の功名とでもいうのだろうか、ちょっと不思議な連帯感が生まれてしまった。
この日はリピーターが多かったようで、私の隣の男性は例のラストシーンの前に凄い気合いの入ったため息をついていた。
私は字幕は一切見ぬようにして画面の隅々を見てたら、なんつーか胡軍ていいなあとしみじみ。エロいよなこのおっさん。
劉燁は前半と後半で明らかに顔が違うが、恋をして目がうるうるになって行くあたり異常に色っぽい。順撮りしたのかなあ。気になる。
 で、コンビニで買った「電影双周刊」でも『藍宇』特集で、記事の充実っぷりはさすが。原作についても言及しており、監督インタビューもあり、帰ってじっくり読まなければ。

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★11月30日

 銅鑼湾のUA時代にて。
午後4:00の『最後一強』を見た後(あ、これが期待してなかっただけに面白かった。李連杰の英語すげー上手くなったなあ)速攻で午後6:00の『藍宇』のチケットを買う。窓口のおばちゃんに「またかよ」と笑われる。通算4回目がばれたのかと思ってドキっ。
そして「III級片だよ!いいのか?」と聞かれるが「無問題!」
もちろん問題にされてるのは冒頭の場面なのだが、あの場面でパンツはいてる方がいやだ。それに香港だとスクリーン下部に中文、英文字幕が2段で出るから見えにくいよね。


 今日は字幕は見ないぞ、と決めて役者の顔ばっかり見ていた。
昨日、集中出来なかったからなあ。ラストシーンで毎回泣いていたのだが、この日はその手前のシーン・・・・藍宇が朝部屋を出る時、閉めたドアに貼ってある「北欧」の階段の写真を見た途端に嗚咽が止まらなくなった。
眼鏡に涙が溜まって困った。
眼鏡を外して拭くと画面が見えないし、かといってそのままにしているとまるで雨の窓越しに映画を見ているようになるし。

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★12月1日

いつものように新聞を開く、『藍宇』の広告を見る。
何?今夜湾仔のPOV書店にて監督の關錦鵬、脚本の魏紹恩、そして舒[王其]による『藍宇』討論会があるって?

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POV書店・・・・そういえば聞いた事があるが場所が判らない。


ど、ど、どうしよう。で、で、電話!いやそんなもん出来ない。


で、こういう時こそ香港観光協会。
日頃まったくお世話になってないけど観光客の味方でしょ?
尖沙咀フェリー乗り場にあるカウンターに飛び込んで「湾仔のPOV書店とは何処か?」と 聞いてももちろん誰も知らない。
仕方ないので新聞の切り抜きを見せる。今夜ここでこういう催しがあるんですー。お姉さんたちが途端に面白がって集まって「あー、藍宇!」「らんゆー?」と騒いでくれて、どっかに電話までして色々と住所などを調べてくれた。ありがとう香港観光協会。


よっしゃ、場所は判った!!あとは夜9時まで元朗で過ごすのだ!何故か元朗で『吠える犬は噛まない』を見て時間を潰す。しかし私の頭はすっかり夜の討論会の事でいっぱい。
そ、そうだ録音せねば!!だって通訳なんていないんだもーん。せっかく行っても何も判りませんでした、では勿体ない。元朗の電器屋にて、急きょ録音機購入。ああ予想外の出費・・・・こんな事なら日本からテレコ持ってくれば良かった。まさかこんな事があるとは。仕方ない。

テープよし!電池よし!

 てなわけで、現場では録音しつつ一応メモをとってはいたが、まーはっきり言って私レベルの廣東語理解力では話の9割は聞き取れないね。

この時書いたメモ↓
「だんだんこの辺になるとどこからどこまでが質問なのか判らない。っちゅーか前に座ってる奴に足踏まれた。あと何か5日にイベントがあるみたい。プロパガンダがどーとか言っている。いい雰囲気。みんなきちんと色々意見をぶつけるなあ。よく喋るなあ。胡軍の事か?彼がこの役に最初は入れなかったと言っているように聞こえた」

と、全く役立たず。

 そんなわけであっという間に2時間終了。判らないなりに楽しかった。こんな風に作品について、製作者たちと対等に同じ目線で語り合える機会があるなんていいな。

終ったあと図々しくも、監督に「私日本から来ました。」とミーハー丸出しで声を掛けた。サインでももらっちゃおっかなー程度の軽い気持ちでした。ところが監督、凄い真剣に私の目を見て話を聞こうとしてくれ「いや、あのー。あわわわわ。えーあのですねー」といきなりしどろもどろになってしまった。予想外の反応に頭の中真っ白。この日本人と名乗る怪しい女の無茶苦茶な廣東語にも、何とか答えてくれる。しかし頭の中は依然真っ白で何を言ってくれたのか聞き取れていない。
自分から声をかけておいて人の話を聞かないという、かなり失礼な態度をとった私。ああああああ。そんな私を哀れに思ったのか「早よ帰らせてくれよ」と思ったのか、關錦鵬の方から「サインしてあげる。何か書くもの持ってないの?」と言ってくれました。先程貰った『藍宇』カードにサインを・・あ、ありがとうございます。そして無礼な態度でごめんなさい、關錦鵬よ。

 

★12月2日

今日は太古城中心で見ようと思い、ラマ島の帰りに太古に向かった。
でも太古城中心に映画館なんてあったかなあ?案の定見つからず警備のおやじに聞くはめに。太古城にあるのはコーンヒルブロードウェイとかいう映画館。何じゃそりゃ。
しかも反対側やんか!上映時間が!間に合わない!走り回ってやっとの事で映画館に辿り着いたら、やってない。
騙されたのか?!仕方ないのでそのまま地下鉄で移動してAMC又一城で見ることにしよう。島で山登りした後なのにまた大汗かいた。


 この土日は何処へ行ってもバカみたいに混んでいる。こういう時の客層って不安だなあ・・・やっぱり右隣のカップルは、こないだのバカどもよりゃマシだが、完璧におちょくった態度でちとうるさい。
左隣の方は相当のリピーターらしく、いちいち場面やセリフに反応して、身を乗り出したりブツブツ言ったりしてた。

私ももういいかげん主題歌も覚えた。ここは最後までちゃんと見せてくれたが、浸っていたら客席には私しか残ってなかった。

★12月3日

ああ、もう今日で最後なんだなー。

別に意地になって毎日見ているわけではない。見ないと胸騒ぎがするというか・・『藍宇』という映画の肌ざわりや空気に少しでも触れていたいのだ。

別れるのが本当に辛い、寂しい。

今日は2回見よう。まず午後12:30にGV旺角にて一回。窓口ではまだレジも開いてないうちからチケット購入。
入場の時に初めて「小姐、身分証!」と言われたので、パスポートのコピーを見せた。
客は私を入れて6人。途中ニ回、スタッフの見回り有り。盗撮防止のようだ。
周りの座席に誰もいないので立ち上がって見てみたりと好きに出来ましたわ。そして画面の隅々をゆっくり味わった。

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 夜は再び油麻地、百老匯へ。
ここは私が『藍宇』を見る環境としてはベストな映画館であると思う。客層も良い。
宿のある尖沙咀から歩いて来たので喉が乾いたー。ビールでも飲もうかと思ったが、そういえば香港に来てから一滴も酒を飲んでいないのだ。どうせなら綺麗な肝臓のまま帰るのもいいかもしれない。
それに今飲んだら止まらなくなりそうだ・・・そんなおセンチな気分なの。


 セリフや画面や場面や、役者の表情や仕草や体温や、窓から差す陽の明るさや暗さやら気温やら、そういうものをいっぱい感じた。

『藍宇』って愛しい映画だなあ。

香港で見れて良かった。

仕事だの家事だの日々の細かい事を何も考えずに、これだけ『藍宇』に没頭出来た6日間は有意義だった。

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