DoubleMintGum

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ロシア映画の全貌2001

'01.8月4日ー9月24日三百人劇場
          「ロシア映画の全貌2001」

         
 またしても独自の企画で楽しませてくれる三百人劇場。この機会に昔見たタルコフスキーの作品や、パラジャーノフ作品をスクリーンで見たかったのだが、結局5本のみ(※)という寂しい結果に。(実は1991年にもここで「ソビエト映画の全貌」という企画が有ったのだ。旧作のラインナップはほぼ同じ。当時は全く参加出来なかったので、まあ今回5本見れただけでも良しとしよう)
           しかし作品の内容は寂しいどころか、盛り沢山、 各テーマ別に選りすぐっていて充実している。
           さすがロシア(旧ソ連)、広大な大陸と膨大な国家予算と無謀な人材の宝庫でした。計り知れぬ懐の深さを感じる秀作揃い。
           ハリウッドの栄華の対極にある合理的な芸術性、SF(が多いのも特徴か)から民俗、プロパガンダまで。目からウロコな発見もあり堪能しました、ロシア映画

-上映作品-
          "戦前篇"
          『アエリータ』1924年 監督/ヤーコフ・プロタザーロフ
   サイレント作品。弁士も楽士もいないので、当然場内はシ~ン。普段は気にならないような物音、咳払いまでもが響き渡ってしまう。が、作品に入り込むうちそれも忘れてしまいます。
    ソビエト映画史上初のSF映画でもある。何よりフィルムの状態があまりに良いのに驚いた。見苦しい箇所はほとんどなかったなあ。凄い。
     火星に行く夢を追う地球人技師と火星の女王アエリータの恋。なんてロマンチックな物語、と思いきや!これがさすが旧ソ連なだけあって一筋縄ではいかない。
     ロシア革命のセオリーを持ち込んで、火星の王政を打倒!火星にも社会主義共和国を!と叫んでみたりして。で、結局はブルジョアよりも市民なりの幸せを得るプロパガンダがそこかしこに。
      食卓に出て来るサモワール(巨大で無駄の多いポット・・とでも言いましょうか)、外出の際は靴の上から防寒ブーツを履いていたり、といった風俗も興味深 かったのだが、特に火星のシーンでの美術が凄かったああ。これぞロシアン・アヴァンギャルド!本物のアール・デコ。なんと前衛的なんでしょう。構図、メイ ク、衣装、演技の様式美。既に「映画」が完成されているという事に、改めて感心。

                   

『母』1926年 監督/フセヴォロド・プドフキン
            『アジアの嵐』1928年 監督/フセヴォロド・プドフキン
            『大地』1930年 監督/アレクサンドル・ドヴジェンコ
            『チャパーエフ』1934年 監督/セルゲイ・ワシリーエフ、ゲオルギー・ワシリーエフ
            『陽気な連中』1934年 監督/グリゴーリー・アレクサンドルフ
            『シチョールス』1939年 監督/アレクサンドル・ドヴジェンコ

"巨匠エイゼン・シュテイン"
            『ストライキ』1925年
            『戦艦ポチョムキン』1925年
            『十月』1928年
            『全線』1930年
            『アレクサンドル・ネフスキー』1938年
            『メキシコ万歳』1934年
         

         

"アンドレイ・タルコフスキー"
            『ローラーとバイオリン』1960年
            『僕の村は戦場だった』1962年
            『アンドレイ・ルブリョフ』1969年
            『惑星ソラリス』1972年
            『鏡』1975年
            『ストーカー』1979年
         

         

" 戦後篇"
            『石の花』1946年 監督/アレクサンドル・ブドゥシコ
            『シベリア物語』1947年 監督/イワン・プィリエフ
            『女狙撃手マリュートカ』1956年 監督/グリゴーリ・チュフライ
            『誓いの休暇』1959年 監督/グリゴーリ・チュフライ
            『一年の九日』1961年 監督/ミハイル・ロンム
            『ハムレット』1964年 監督/グリゴーリ・コージンツェフ
            『火の馬』1964年 監督/セルゲイ・パラジャーノフ
            『落葉』1966年 監督/オタール・イオセリアーニ

『妖婆・死棺の呪い』1967年※ 監督/コンスタンチン・エルショフ、ゲオルギー・クロパチョフ
   噂の一本。映画ファンの間で何かと話題になるこの作品、やっと見ました。
    文豪ゴーゴリーが民間伝承を元にした怪談『ヴィー』が原作。
『牡丹灯籠』か『日高川』か。洋の東西を問わずこのての怪異譚は不滅です。妖婆がのり移った娘は美しいし、ラストでわんさか出て来るモノノケたちも独創的で素晴らしい!妖怪っていいなあ!『千と○尋の神隠し』なんかより数倍好き!!
DVDも買っちゃいましたよ。

            『ピロスマニ』1969年 監督/ゲオルギー・シェンゲラーヤ
            『チャイコフスキー』1970年 監督/イーゴリ・タランキン
            『リア王』1971年 監督/グリゴーリ・コージンツェフ
             ↑これは日本公開当時(1987年頃??)シネマスクエアとうきゅうで見た!重かったあー。
            『道中の点検』1971年 監督/アレクセイ・ゲルマン
            『ジプシーは空にきええる』1976年 監督/エミーリ・ロチャヌー
            『田園詩』1976年 監督/オタール・イオセリアーニ
            『孤独な声』1978年 監督/アレクサンドル・ソクーロフ
            『スタフ王の野蛮な狩り』1979年 監督/ヴァレーリー・ルビンチク
            『モスクワは涙を信じない』1980年 監督/ウラジミール・メニショフ
            『わが友イワン・ラプシン』1984年 監督/アレクセイ・ゲルマン
            『日陽はしずかに発酵し・・・』1985年 監督/アレクサンドル・ソクーロフ
            『ピロスマニのアラベスク』1986年 監督/セルゲイ・パラジャーノフ
            『エレジー』1986年 監督/アレクサンドル・ソクーロフ
            『自由はパラダイス』1989年 監督/セルゲイ・ボドロフ
            『動くな、死ね、甦れ!』1989年 監督/ヴィターリー・カネフスキー

"ニキータ・ミハルコフ"
            『愛の奴隷』1976年
            『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲』1977年
            『オブローモフの生涯より』1979年
            『シベリアの理髪師』1999年

         

"文芸作品"
            『戦争と平和(総集編)』1965-67年 監督/セルゲイ・ボンダルチュク
            『アンナ・カレーニナ』1967年 監督/アレクサンドル・ザルヒ
            『コーカサスの虜』1996年 監督/セルゲイ・ボドロフ
            『カラマーゾフの兄弟』1969年 監督/イワン・プィリエフ
            『罪と罰』1970年 監督/レフ・クリジャーノフ
            『小犬を連れた貴婦人』1960年 監督/イォシフ・ヘイフィツ
            『ワーニャ伯父さん』1971年 監督/アンドレイ・コンチャロフスキー
         

         

"旧ソ連民族共和国の秀作"
            『少年、機関車に乗る』1991年 監督/バフティヤル・フドイナザーロフ
            『コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って』1993年 監督/バフティヤル・フドイナザーロフ
            『ラスト・ホリデイ』1996年 監督/アミール・カラクーロフ
            『あの娘と自転車に乗って』1998年 監督/アクタン・アブディカリコフ
            『ルナ・パパ』1999年 監督/バフティヤル・フドイナザーロフ
         

         

"新生ロシア"
            『モスクワ・天使のいない夜』1992年 監督/セルゲイ・ボドロフ
            『こねこ』1996年 監督/イワン・ポポフ
            『ムムー』1998年 監督/ユーリー・グルイモフ

『フリークスも人間も』1998年 監督/アレクセイ・バラバノフ
           フェチでエロスの作品。こう書くと何か実も蓋もない感じだが、「フェチ」や「エロス」というものはこのように他人様には決して言えないものなんだよ、人生の裏道を歩くものなんだよ、という確固たる美意識に基づいて鞭打ちビザール写真の世界が展開される。
           トッド・ブラウニングの『フリークス』もバラバノフ監督にインスピレーションを与えたに違いない。
           作品にビシッと通った退廃の筋は素晴らしいと思う。現代に作った映画なのにこの暗さ、重さ、一朝一夕で出来るものでは有りません。まったくハラショーです!建築物も全て現存する物、セットなどではないがまるで19世紀の町並みである。衣装、家具、ディテールに凝っているなあ。ここでも食卓に登場するサモワールが気になったりして。
           サンクトペテルブルグ、この都市の美しさ。どうする事も出来ず堕ちていく人間の醜さ。そして、街行く人々が皆同じチェック模様の鞄を持っている構図と か、蒸気船、路面電車の風景などが視覚的にとてもシュールで、ぞっとするほど美しい。ラストシーンも美しかったが少々感傷的すぎたと思う・・・・。
         
          フルスタリョフ、車を!』1998年 監督/アレクセイ・ゲルマン
           一体この映画は何なのか。最初はついつい頭でストーリーや科白を追おうとしてしまうのだが、まったくわけが判らない。極端に説明的な部分を省いているよ うだ。こんな見方じゃあかん、と「理解しよう」とするのを放棄した途端、凄まじい力の波に飲まれた。クレイジーな映画である、としか言い様がない。そして グロテスク。この狂い方は何か、気になる。
           こちらの勉強不足を痛感せざるを得ないのだが、物語は1953年のスターリンの死と、ユダヤ系医師が多数強制収容された「医師団陰謀事件」が核になって いる。疎いです、はっきり言って。私より廣東語教師(香港人)のほうが詳しかったくらいだからなあ。後程パンフレット購入などでその辺は「あー、なるほどねえ」と思ったりしたわけだが、むしろ私は最初にこの映画から感じた感覚を信じたい。
           怒濤のカメラワーク、科白の洪水、八方塞がりな閉塞感からもがき暴れまくる人々。このクレイジーな空気が何を伝えようとしているのか。これもまた「国家」に翻弄される「市民」たちの物語なんだ。
           主人公クレンスキー医師の怪異な造型も凄い。軍医(脳外科医)にして赤軍の将軍。入院患者にも「患者同志」と言ってるのかあ。彼の周囲、家庭も職場も 狂っている。しかしこの状況が当時の「ソ連」なのか、これを信じて生きていたのか、皆。クレンスキー自身が収容所に向かう途中、暴行やレイプを受けるシーンも非情でグロだ。人間の、生きようとすればするほど汚くなっていく部分が有る。かと思うと、モノクロの画面ははっとする様な静寂さも出し、冷たい美しさを感じた。
この映画が何だったのか、未だに判っていないのかもしれない。しかし、忘れがたい映画である。狂気と不条理。心に傷となって残る映画だな。
           「フルスタリョフ、車を!」とはスターリンのいまわの際の言葉であるらしい。
       

       

"開催記念公開"
          『ロシアン・ブラザー』
         
1997年 監督/アレクセイ・バラバノフ

       

 『フリークスも人間も』の前年に作られた、とても同じ監督の手によるものとは思えない娯楽商業作品。
           これは無理矢理例えるならば『メイド・イン・香港』(原題・香港製造)かな。しかし状況はこちらの方が遥かにシビアだ。

       

 前科がある親を持ち、軍役を終え故郷に帰っても居場所がない若者ダニーラ。都会で出世している兄を頼って行ったが、兄の職業は殺 し屋だった。「仕事」を手伝う事に何のためらいもなく、むしろ楽しんでいるかの様に見える。人を殺す事で大金が稼げる、都会で生きて行くには「力」と 「金」だと無邪気に信じているだけの様にも見える。ダニーラと接点を持つホームレスおやじ(ドイツ人移民)や路面電車の運転手の中年女性などのキャラク ターが切ない。こんなに哀しいのに、なんでこんなに図太いんだ。

       

 劇中でダニーラが夢中になるバンドNautilus Pompilius(字幕ではノーチラス)の曲がやたら印象的。このバンドの曲とダニーラが出会うシーンからして秀逸!(ライブシーンなどでノーチラスも出演している。)
          「仕事」の真っ最中に憧れのノーチラスのメンバーと遭遇して我を忘れて追い掛けて行ってしまったり、CDを肌身離さず持ち歩いていたお陰で命拾いしたり。 なんで彼がそこまでノーチラスを好きになるのかなあ、と思いつつ見ていると、やはり歌詞かな。底辺でもがく市民の共感を呼ぶような感じだったし、音自体も アナログなロックで(伍佰か?!)いい。
          途中、ダニーラがアメリカのダンスミュージックを聞いて「これは全然良くない」と言うのも面白い。「意味が判らない」から嫌いなのだ。ソウル(魂)が感じられないから気に入らないのだ。
           このノーチラスって、実際にロシアで活躍しているミュージシャンなんだろうなあ多分、とロシア映画専門のサイトで教えてもらったらその通り。バンドの公式サイトも存在した!が、しかし!TOPは英語表記でしたが中のコンテンツは全てロシア語(当然、文字も)でお手上げ。読めない(涙)。
       

       

 サンクトペテルブルグの町並み、路面電車、橋、川、蒸気船・・・・『フリークスも人間も』の影を感じるねえ。この作品が売れたお 陰で「本当に作りたかった」映画『フリークスもー』を作る事が出来たわけだ。やはりこの二本の映画は「=」で繋がるものなんだね。どちらにも出演している 役者ヴィクトル・スホルコフが不気味で得体の知れない雰囲気があって良い。笑顔が恐い。

       

 ロシア国内で97年最大のヒットになったのも納得。続編『BRAT2』もあり、何とこの兄弟がアメリカに渡るストーリーだというではないか!こちらも去年ロシアでまたまた大ヒット。ぜひとも公開してほしい作品ですね。

       
         

            『3人兄弟』2000年 監督/セリック・アプリモフ
            『アクスアット』1999年 監督/セリック・アプリモフ
            『宇宙飛行』1935年 監督/ヴァシリー・ジョラヴリョフ

       
       

          『火を噴く惑星』
         
1961年 監督/バーヴェル・クルシャンツエフ
           SFXと言うなかれ!CGでもない!これは「特撮」だ! 「ウルトラQ」な世界です。
           H・G・ウェルズの昔から、宇宙人といえば火星人。地球以外の知的生命体と言えば金星。大国ソ連の威信を掛けた金星調査に向かう宇宙飛行士たちの物語。果たして金星には何が有るのか?
           常にアメリカと科学技術を競いあっていた頃の「ソビエト」らしさが感じられる。監督は1931年から科学普及映画を撮り続けていて、児童の為の科学読本の執筆もしている。筋金入りだ。
           宇宙ロケットの通信に使われるのがオープンリールのカセットテープだったり、はりぼてロボットのjohnは『2001年宇宙の旅』のHALよりも人間臭い。敬語にしか反応しないジェントルマンだ。金星は何故か地球のジュラ紀にあたり、着ぐるみのケラトザウルス(ちょっとミニラ入ってる)たちが乗組員に襲い掛かる。謎の金星人女性(?)は『宇宙戦艦ヤマト』のスターシャのテーマの様に歌う。しかし、特撮はかなり上手いのです。アナログなハイテク世界にワクワクしてしまう。
           科学というものに無責任なまでの憧憬と、過度の期待を抱いていた頃の映画だなあ。