DoubleMintGum

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映画「ミモラー心のままにー」1999年原題Hum Dil De Chuke Sanam)

監督/サンジャイ・リーラー・バンサーリー
      主演アイシュワリヤー・ライ/サルマーン・カーン/アジャイ・デーヴガン    

 この映画には思い入れが有る。99年11月、香港の常宿、重慶大厦で印度映画のVCDやCDを買い漁っていた時だ。 まだまだヒンディー映画初心者、シャー・ルク・カーンの映画も何を見ていいのやら状態。       ましてタイトルは見なれぬヒンディー語やら英語やらで増々わけが判らん。そんな時は店の人に聞くのが一番。彼等こそ印度映画迷なんだからね。
        あっちに行っては「私はヒンディー映画が見たい!特にシャー・ルク・カーンの!」こっちに行っては「シャー・ルク・カーンのVCDが欲しい!」で、どの 店でも大歓迎された。皆、本当に好きなんだなあ印度映画が。印度人、ネパール人、パキスタン人、どの店員も詳しいんだ。       「これはアクション、これはコメディ、これはロマンス。この女優はいい」「俺はこの映画が好きだ」と自分の好みの主張が激しい。 何軒目かの店でも同じようなやりとりをして、見ると私が頼んでいないVCDが混ざっている。       「この映画はいらない。見ない」すると向こうも負けない「これは最高のラブストーリーだ。今一番人気が有る」 うーん、どーしよーかなー、はっ、いかんいかんここで負けては思うつぼだ。しかし何度除けてもすぐに買おうとしているVCDの山にこっそり混ぜているの だ!ええい、そこまで言うなら買うよ!それがこの『Hum       Dil De Chuke Sanam』(直訳すれば「私の心は愛しいあなたのもの」)だった。
       あの時の強引なお薦めがなかったら、この映画との出会いがもっと遅れていたかもしれない。感謝してます。
       実際はシャー・ルクの映画を見倒した後だから、かなり後になって見たのだが・・音楽と映像と舞踊の美しさにショックを受けた。主演の三人のはまり具合に心 打たれた。アイシュワリヤーの人形の様な美貌に今まで感情移入出来なかったのが、これは違った。前半と後半の心の動きがこちらの胸に迫ってくる。       初めて見たアジャイの演技もツボ!こんな役をやられたらたまりません。

   

 イタリア人と印度人のダブル、サミル(サルマーン・カーン)が、印度古典音楽を修行しに行き、師匠の娘ナンディニ(アイシュワリヤー・ラ イ)と恋に落ちる。厳格な師匠は娘と他所者との結婚を許さず、ヴァンラジ(アジャイ・デーヴガン)と娘を結婚させてしまう。引き裂かれる二人。妻の心が自 分にないと知ったヴァンラジは「愛する人に本当に幸せになってもらいたい、それが自分の幸せだ」と、なんとイタリアにサミルを探しに行くのだ。サミルを探 す道中でナンディニとヴァンラジの心が近付いていく。二人はとうとうサミルを見つけるが、最後にナンディニはヴァンラジを選ぶのであった・・。
        という物語が何故ここまで感動的なのか。それはこの三人のキャラクターの心情が非常に繊細に描かれているから。前半のサミルとナンディニの出会いがい い。反発しあううち、だんだん惹かれ合っていく。エピソードの重ね方が丁寧。無邪気ではじけるようなアイシュワリヤーが本当に眩しいのよお。もうくすぐっ たくなるような恋のときめき感が漂っててニヤーっとしてまう。その感情が高まった時、一気に悲劇に転落。アイシュの落ち込む姿があまりに痛々しく切ない。 涙。後半はアジャイの独壇場である!「不器用ですけど誠実です」を絵に描いたような顔、でかいし濃い。あんた何でそこまで尽くすのか?こんないい奴いるの か?と突っ込む暇を与えぬ個性と展開。
       目新しさはあまりないストーリーでも、切り口次第で新鮮になるんだなあ。印度映画を見るうえで重要な「結婚」観が大きなポイントでもある。 「出会った瞬間、運命的な恋に落ちる」という設定が多いのも、裏を返せば「自由恋愛」が出来ない(出来にくい)状況であるからだろう。この映画の中でもそ う。あるコミュニティーの中に他所者が入り、自分の血族と関係を持つ事を恐れる。そして女性に人権はない。女が自分で生きる道を見つける権利はないかのよ うだ。
        ナンディニの親族(いとこ)の女性が、実は恋人がいながら父親の決めた相手に嫁ぐが、夫からの暴力に耐えかねて実家に戻るエピソードが有る。(ドメス ティック・ヴァイオレンスのケアなんてものはなさそうだ・・・。)親族会議で男達の意見は「女はどんな事をされても夫に仕えるべし」だが、ナンディニと西 洋の感覚を持ったサミルは、いとこと恋人を駆け落ちさせる。(この事件が二人を別れさせる決定的なものになる。)また、ヴァンラジが結婚式で踊るナンディ ニを見初めるシーン。お互いまだ面識がないのにヴァンラジが「彼女を気に入った」と言うと、ヴァンラジの妹は「結婚おめでとう!」となる。このシーンで私 の隣の席の人は「わはは、そんなバカな」と失笑していたんだよね。印度映画にありがちな唐突な展開に思えたか?でもこれこそが現実では?娘はショーケース の中の商品で、品定めされ勝手に選ばれたら「NO」とは言えないんだから。当人同士と両家の親同士が合意して、その上カーストも問題なく結婚するケースな ら良いが、婚約までの数々の段取りの中で当人同士が顔を合わせるのは最後の方だもんねえ。そんな矛盾点も考えさせられたわあ。でも好きなんだこの映画が。
       その理由のひとつが歌、もうひとつが舞踊シーン。コレオグラファー(振り付け師)にはあの御大サロージ・カーンも名を連ねているではないかい。さすが。
   

   
   

←サントラCD。
      これも押し売りに負けて買いました。
       イスマイル・ダルバルによる全11曲、すべて名曲!!おまけに『Biwi No.1』から2曲入ってる。印度映画サントラではお約束(サルマーン繋がりでか?やっぱ)。
       1曲目は『Ankhoon Ki Gustakhiyan』いとこの結婚式でいちゃつくサルマーンとアイシュのシーンで使用。甘くじゃれあう二人が可愛らしい。
       2曲目は後半の最初の山場で使用の『Dholi Taro Dhol Baje』。ロケと群舞の美しさは素晴らしい。引きで撮るダンサー達の動きは計算され尽くしている。衣装も振り付けも、大変私好みでVCDでも何度もこの シーンだけくり返し見た。そしてこれと『Nimbooda』のシーンを大画面で見る為だけにお金を払っても惜しくはない。
       4曲目『Nimbooda』この映画の邦題『ミモラ』っつーのはここからきたのかい??ミモラってそりゃないよ・・・。ニンブーダ(小さくて酸っぱいレモン)がそう聞こえますかねえ。
        数年前、印度北西部ラジャスターンの放浪芸人の音楽のテープを聞いた。そこで歌われていたのがこの『Nimbooda』だった。あれ、どっかで聴いた事 が有ると思ったらそうか。アレンジはこちらの方が洗練されています。楽士たちは主に婚礼の席などに招かれ歌い踊る。この曲もおめでたい席で演奏される、と 書いてあった。(作品中でも婚礼の余興シーンで使用)ここでのアイシュの踊りも見事にキュート!アジャイが一目惚れするのも判る!!
       5曲目『Man Mohni』冒頭のアイシュワリヤー登場シーンで使用。彼女の魅力全開!何も言うまい、見てくれ!
       10曲目『Tadap Tadap』くーーー泣ける演歌や、これは。これを聴くと何故だか『思慕的人』(香港映画『堕落天使』導演・王家衛の挿入歌。台湾語演歌です)を思い出す。テイストが似ていますな。
       11曲目はラストシーンにて使用の『Hum Dil De Chuke Sanam』。アジャイ男泣きにこちらももらい泣き。
   

   
   

 これを見終わったら必ず(?!)誰もがアジャイの虜になるはず。アジャイ・デーヴガン、私生活ではカジョルの夫です。濃いい夫婦やなあ。 2000年の印度フィルムフェア賞などを総なめにしたこの名作、来年日本公開予定。印度娯楽映画は「B級」などという先入観は是非とも捨てて御覧下さい。 それも有りだし、いいんだけど、もっと奥深い楽しみ方が出来る世界です。並のハリウッド映画は裸足で逃げ出す大河メロドラマに酔うべし。