DoubleMintGum

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許冠傑

阿samの歌を初めて聴いたのは小学生の時だ。

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「我o地o尼班打工仔!」で始まる『半斤八兩』は日本で大流行した映画『Mr.Boo!』シリーズの主題歌で、当時のガキはみな聴き取りで覚えたデタラメ 廣東語で歌っていたのだ。
そう、今にして思えば、あれが生まれて初めて聴いた廣東語の歌だった。来日しては「夜のヒットスタジオ」だの「テレビジョッキー」に出演していた阿sam。
私の記憶はさすがにはっきりしてないのだが、何というか「へにゃへにゃしてて、面白い言葉である」という感じでしたなあ。
が、あのへにゃへにゃ感って阿samの声の特徴でしたわ。

ここ数年、香港や廣東語に興味を持って聴いていく中で「廣東語の歌は、口語で歌っていない!」という事に気付いた。普段の話し言葉ではなく、いわゆる文語である。
これじゃあ、歌を聴いて廣東語を覚えるのは無理じゃん(単語の発音の練習にはなるけどさ)
と思っていた所「阿samの歌は口語」だと知る。
さすが阿sam。私があの時覚えた「我o地o尼班打工仔」はそのまま使えるという事だね!(いつ、どこで使うかは別として)

『Mr.Boo!』といえば、許三兄弟(本当は四兄弟なんだけど)。
許冠文(マイケル・ホイ)、見ただけで笑かしてくれる許冠英 (リッキー・ホイ)、そして阿samこと許冠傑(サミュエル・ホイ)は、1966 年からアジアのビートルズと言われたThe Lotus(蓮華楽隊)で活躍。この当時の曲は全て英語曲で、カバーが多かったらしい。

香港大学卒業後の1970年、TVB(無線電視)の番組『雙星報喜』で兄、許冠文と共演、主題歌『鐵塔凌雲』もヒットする。1974年、許冠文の映画 『Mr.Boo!ギャンブル大将』(原題・鬼馬雙星)の主題歌である同名曲と『雙星情歌』が大ヒット!翌75年の『天才與白痴』、76年の『半斤八兩』も 更に大ヒット!もちろんこれも映画『Mr.Boo!』シリーズ。一躍阿samは時代の寵児になる。
この一連の曲たちは今聴いても心が踊る。
『鬼馬雙星』の歌詞の中にある「人生は博打だ!」というフレーズが好き。
『半斤八兩』は直訳すれば(半斤も八兩も)どちらも「300g」転じて「どっちもどっち」。
阿samの廣東語はとても聴き取りやすい撥音だし声調に忠実だ。
私は乾物屋で買い物する時「♪半斤八兩~♪」と小声で歌ってから「蝦米半斤!唔該!」と言っていた。

『打雀英雄傳』は後に張學友にカバーされ、あの香港アホ映画N0.1『大英雄』(原題・東成西就)の主題歌にもなった最高のコミックソング(と勝手に決めている)。
『先敬羅衣後敬人』はまず外見で人を判断する世を風刺。
海外の名曲に廣東語歌詞をあてただけのものも多いが、例えば『ワシントン広場の夜は更けて』が受験生ブルースになってしまった『學生哥』などは出色である。メロディーラインにもぐっとくるのだが、彼の歌の魅力はやはり歌詞だと思う。
私の廣東語能力ではまだまだ全ては理解出来ない。でも言葉の端々から感じる生活感が有る。

 
廣東語の口語で歌う、それが何故そこまでの「大事件」になるのか。
それ以前が英語もしくは普通話(北京語)での歌曲が主流で、中国語の一方言である廣東語は"よそゆき"の言葉ではない、という認識が根強かったようだ。今でも。
また自ら作詞、作曲もこなす阿samの歌詞は 「鬼馬歌」と呼ばれる程、社会風刺、批判性が強かった。まだ貧しかったであろう70年代香港の、廣東語を第一言語とする人々の「民衆の歌」になったからではな いか。廣東語歌曲を語る上で、他にも羅文(ローマン)や鄭少秋(アダム・チェン)などの存在も無視できないのだけど、阿samは一線を画している存在なのだ。

 今尚、多くの香港人や香港芸能人から「歌神」「天皇巨星」と言われているも、1993年に引退。引退の頃の映像を見ても、あまり魅力を感じなかった。商業主義にすっかり身も心も曝された・・・・という感あり。
引退後はきっぱりと芸能界に姿を現す事がなかったのに、1999年オリジナルミュージカルを演出するという。

出演は若手の鄭伊健、陳小春、梁詠琪、楊千嬅など。淡い期待を胸に抱き見に行ったのだが結果は苦しかった。
ただ、やはり往年のヒット曲が流れるとドキドキした。曲の持つ魅力は色褪せないんだなあ。じーん。
2000年には『大贏家』で映画に復帰。領銜主演は謝霆鋒(ニコラス・ツェー)、共演に麥嘉をもってきて『悪漢探偵』(原題・最佳拍档)再び、をいまさ ら狙っているのか?と、とことん不安にさせてくれたが予想的中。ぶっ倒れるくらいつまんない映画でありました。もう、どうか私達の心の中の星でいて下さい(泣)

2001年は意外な所で阿samの歌を聴いた。郭富城(アーロン・クォック)が演唱會で『杯酒當歌』を歌ったのだ。「ひゃああああ!!」と、奇声を発してしまったくらい不意打ちだったので感動したよ。
郭富城の年齢からいっても、彼自身が阿samの歌と共に成長した世代なのだろうなあ、としみじみ。