DoubleMintGum

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『何が私をこうさせたか』

昨日買ってきた金子文子の獄中手記『何が私をこうさせたか』を読み始めた。

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この本が岩波文庫から出たのが2017年、つい最近の話だ。
まさにタイムリーじゃないか。
映画に関連して、昨年(韓国文学の翻訳で知られる)斎藤さんのブログを読んでいたが、その頃はまだ『朴烈』を日本語字幕で見られる日はこない、と思っていた。

⬆︎ブログ内でも斎藤さんが言及されているが、どんなに「リベラル」な人でも骨の髄まで染みたジェンダーバイアスを解くのはなかなか難しいようだね。
刷り込みとはかくも恐ろしきものなり……

 

金子文子が朴烈と同居するにあたり、ある三つの条件を提示する。

  1. 同志として同棲すること
  2. 私が女性であるという観念を除去すべきこと
  3. 一方が思想的に堕落して権力者と握手することができた場合には、ただちに共同生活を解くこと

映画の冒頭でこのシーンが出てくるけど、なんというか私がモヤモヤするのはこういった個人と個人がお互い自立した存在として共に在るというただそれだけの関係をやたらと「愛」に絡め取って語りたがるところなんだな。

私は朴を知っている。朴を愛している。彼に於ける凡ての過失と凡ての欠点とを越えて、私は朴を愛する。
そしてお役人に対しては云おう。どうか二人を一緒にギロチンに放り投げてくれ。
朴と共に死ねるなら、私は満足しよう。
そして朴には云おう。よしんばお役人の宣告が二人を引き分けても、私は決してあなたを一人死なせては置かないつもりですーと。

この発言をして、朴烈に命を捧げた女性の純愛みたいなのは、わしには一切感じられないんだよ。

私は大正八年中朝鮮にいて朝鮮の独立騒擾の光景を目撃して、私すら権力への叛逆気分が起こり、朝鮮の方のなさる独立運動を思う時、他人事とは思い得ぬ程の感激が胸に湧きます。

⬆︎劇中のこのセリフも実際に金子文子自身の言葉である。

私は日本人ですけれども、日本人が憎くて憎くて腹のたぎるのを覚えます。
私がその時ただ目に反射されただけのできごとは、大きな反抗の根となって私の心瞳に焼き付けられております。
私の在朝中の見聞は、私をして朝鮮人のあらゆる、日本の帝国主義を向こうへまわしての反抗運動に異常な同情を持たせました。
私は上京すると間もなく多くの朝鮮の社会主義者あるいは民族運動者と友人になりました。

 

あなたは民族運動者でしょうか。
私は実は、朝鮮に永らくいたことがあるので、民族運動をやっている人々の気持ちはどうやら解るような気もしますが、何といっても私は朝鮮人ではありませんから、朝鮮人のように圧迫されたことがないので、そうした人たちと一緒に朝鮮の独立運動をする気にもなれないんです。
ですから、あなたがもし、独立運動者でしたら、残念ですが、私はあなたと一緒になることができないんです

ここを読んでものすごく胸を打たれたというか、思わず立ち上がってしまった。
後者は朴烈に(配偶者がいないのであれば)同棲しよう、と持ちかける際に言った言葉なんだけど。
金子文子は、女性として、無籍者として虐げられてきた経験から朝鮮の人々に強い共感を抱くし共に権力に抗っていきたい。でも一方で自分は「日本人」であるという「権力」を持っていることを自覚している。
権力勾配をはっきり自覚している。

昨日も書いたけど、やはり金子文子の物語が日本の中から出てこなければなー。
南京大虐殺も、戦時性奴隷(「慰安婦」)も、中国人・朝鮮人強制連行も。
そこでやっとゼロになる、スタートラインに立つことが出来ると思う。

 春以降の仕事のスケジュールを書き込む時、「退位の日」「即位の日」と印刷されたカレンダーを見て暗澹たる気分になるよね。
『金子文子と朴烈』はいい映画だ。見てよかった。とスッキリして満足して消費して、それでも退位の日と即位の日にはヒノマルを振るなんて、そんなふてえ(不逞)奴にはならねえぞ。戦うべき相手は、戸籍制度、家父長制度の頂点に居るあの「象徴」だ。
ぶっ壊そうぜ、断ち切ろうぜ。
と思いました。

『父』

現在、青空文庫で無料閲覧できる金子文子の随筆がある。
本を開く前にこちらを先に読んでみた。

www.aozora.gr.jp

私の記憶は私の四歳頃のことまでさかのぼることができる。その頃私は、私の生みの親たちと一緒に横浜の寿町に住んでいた。

ええ!そうなの!?
横浜出身、という略歴は見たけど寿町だったの!?
わしが(いまはなき、ちんどん朝日堂を)旗揚げしたのが寿町ですよ…そうかそうだったのか、と更に金子文子へ前のめりになってしまった。