DoubleMintGum

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東映黄金時代劇「沢島忠の世界」

'01.5月12日ー6月3日三百人劇場/東映黄金時代劇
「沢島忠の世界」

時代劇のメッカといわれた東映京都から監督デビューした、沢島忠。1926年滋賀県出身。1950年東映の前身、東横映画入社。マキノ雅弘らに師事。
今回、私が見たのはたったの7本(※)だが、最初の1本見た時点で「今回スカなしかも!」と手応えを感じた。(仁侠物はパスして、時代劇中心に見てみました)


1950~60年代、日本人が最も映画を見ていた時期。映画製作、鑑賞のレベルや感受性は今より遥かに高かったとも思う。当時の大映、東宝、日活など、こういった作風(現代感覚で作る「娯楽時代劇」ジャンル)は多かったし、市川雷蔵主演物なども好きで見たけれど(森一生、田中徳三、池広一夫監督の作品)、 沢島忠の感覚は抜きん出ている。
脚本のセンスの良さ、ストーリーのリズム、テンポの良さ。全体にもの凄くスピード感があるのだが、ただ流れていくのではなくて緩急のつけ方が上手い。
泣かされ、笑わされ、ハラハラするわで、正に思うツボ。文句なしで楽しい。40年以上たった今見ても遜色なし。役者たちの若々しさが輝いていて、これぞ 「青春時代劇ミュージカル」素晴らしくゴージャス。
セットにしろ、ロケにしろ金かかってるなあ。そして一番印象的だったのが、青空。ドピーカンの空が、いつもそこにあった。

 

-上映作品-
『ひばり捕物帳 かんざし小判』1958年

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主題歌が本当にかっこいい。元々、美空ひばりのラテン系の曲(たいていが、こういった映画の主題歌だったわけだが)には名曲が多い。チャチャチャ、マンボのリズムと、きっぷのいい歌いっぷりが決まっている。冒頭のお江戸美人番付シーンからワクワクさせてくれる。東千代之介演じる 佐々木兵馬さまはイマイチ・・私はやはり華麗な東千代之介が好きなのよ。こういう豪快な浪人野郎役は似合わないよ・・(個人の感想です)
 ある時は男装の目明かし七っつあん、町娘お七ちゃん、またある時は少年剣士、その正体はお姫様という、ひばりの魅力全開七変化。女歌舞伎のシーンで見せる「勧進帳」弁慶の踊りもお見事!       

 『一心太助 天下の一大事』1958年

『殿さま弥次喜多 捕物道中』1959年

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中村錦之助・賀津雄の兄弟コンビが良い。紀州・尾州の若殿二人が、城を抜け出し町人に扮しての珍道中。若くて生きのいい二人のかけあいっぷりが楽 しい。兄弟だからかねえ、やっぱ。息がぴったり合ってるんだよねえ。小気味いいテンポなんだ。二人とも可愛いしねえ。
ギャグも冴えるが、大立ち回りでのスピーディーなカメラ・ワークも冴えまくり!!キャラが一人一人きちんと立っている。歌う船頭さんダークダックスも若い若い(笑)
ひばり主演ものほど歌は多くないが、緻密に計算されたスラップスティックなので飽きさせない。これが結構ハマるのだよ。ああ、このシリーズ全部見たいなあ。

『江戸っ子判官とふり袖小僧』1959年

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オープニングがいいのよ。ノリのいい主題歌と共に「御用」と書かれた提灯が、くるくるとレビューのように踊ります!タイトルロールからしてセンス良すぎー!で、いきなり、牢名主と囚人たちによる『遠山金四郎を讃える歌』(←かどうかは知らんけども)です。画面の見せ方が舞台そのもの。スクリーンで見るからこそ、この奥行きが感じられる。ひばり十八番の男装(男役)がかっこいい!!複雑(?)に入り組む人間関係が、軽いテンポで進んでいく。この突っ走る感じが気持ちいい。そして、歌や踊りの入れ方も実にツボ!印度映画に慣れてしまうと、普通の映画を見ていても「かーっ、何でここで歌わんかなー!」とか 「ここは悲しみを踊りで表現するとこやろがー!」とか、激しく突っ込みたくなるもんだが、沢島作品ではそんなストレスを感じない。カタルシスである。
片岡千恵蔵といえば『鴛鴦歌合戦』('39/マキノ正博監督)です。「オペレッタ時代劇」として永く伝説の映画と言われてきた作品。台詞の9割が歌になる、このミュージカル映画で主演しているだけあって余裕の演技。ちなみに他には志村喬、ディック峰などが出演しており、昨年の三百人劇場の企画「追悼・宮川一夫」映画祭などで上映されました。
江戸の義賊、ふり袖小僧と、今大岡、遠山金さんの、身分を隠した恋と珍道中。それが劇中劇ともいえる構成で語られる。千恵蔵・ひばり初共演作にして『弥次喜多道中記』('38/マキノ監督)のリメイクでもあるという。脱線しまくっているように見えて、苦い浮き世の味もしみてくる。日本橋での再会と、ラストシーンは涙に濡れた。上手い、上手いぞ!あの終わり方は上手すぎるー!

『殿さま弥次喜多』
1960年
ほぼ同キャストで作られた同シリーズの最終作。ダークダックスは歌う流し(当たり前か)の四人組で、又もや登場。ゲストにひばりも加わって豪華!
八代将軍候補になってしまった弥次喜多コンビ。またしても、お城を抜け出し大暴れ・・・・なのだが、もう遊びの時間は終わりなのね、という寂しさすら感じられる。二人にはいつまでも馬鹿やってて欲しかったなあ。と。
ラストの吉原での「二人助六」もかっこいいよー!いいなあこのシリーズ。最後は(ほぼ)満員の客席から、大きな拍手で幕を閉じました。       

        『暴れん坊兄弟』1960年
        『海賊八幡船』1960年
        『森の石松鬼より恐い』1960年
        『家光と彦左と一心太助』1961年
        『白馬城の花嫁』1961年
        『人生劇場 飛車角』1963年
        『人生劇場 続・飛車角』1963年
        『人生劇場 新・飛車角』1964年
        『股旅 三人やくざ』1965年

『新蛇姫様 お島千太郎』1965年

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主題歌の『お島千太郎』も映画見た後だと「花は咲いても 他国の春は~♪」って歌詞に、ぐっときますな。で、林与一!老舗宿のボンボンから理由あって旅役者中村十兵衛一座の花形役者に!当然、ひばりとのレビューシーンがてんこ盛りで楽しいったらありゃしない。昔の役者は本当に歌も踊りも完璧だわなー。『日和下駄』に合わせてのゲタップ(下駄でタップ・ダンスの事。よくやってるんだよね、古い日本映画見ると)もよろし。ひばりちゃん、琴姫とお島の一人二役。
平日の昼間なのもあり、客層は50〜60代多し。大衆演劇をよく見に行っていた頃を思い出させる雰囲気で、映画祭だーってかまえる空気まるでなし!素直に喜んでいて、大団円を迎えると拍手が沸き起こる!という良い環境でした。       

        『小判鮫 お役者仁義』1966年

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始まり方がまた面白く、ひばり(一人二役)の「娘道成寺」も見事。本格的な芝居小屋の舞台セットで、たっぷり踊りを見せてくれる。舞踊の美しさに、ただただ感心。

      

        『冒険大活劇 黄金の盗賊』1966年
        『北穂高絶唱』1968年
        『新撰組』1969年

『女の花道』1971年
ひばり芸能生活25周年記念作品。沢島監督は既に東映京都を離れているので、これは東京映画+日本コロムビア作品。 原作(川口松太郎)が、これまた「ひばりの為に書かれたものか?!」という代物。「芸道物」の王道です!めちゃめちゃ感動したー。
出雲の漁港で育った孤児のおきみ(美空ひばり)。自分を拾い育ててくれたお婆(北林谷栄)と共に出雲大社のお札を売りつつ行脚して、京都に辿り着く。この旅路で見せる念仏踊りのシーンが素晴らしい。そして、京都鴨川の河原で踊る姿を、狂言舞の師匠に認められるのだが・・・・。
ラストシーンに到るまでの間に、主人公おきみが出す答えこそが最も感動的。芸術として高められた舞よりも、宮中での名誉よりも、民衆の間で、人の間で踊ることが本当の喜びだと掴むのだ。時は幕末、戦火にさらされ焼け野原になった京都で、被災した人々と踊り狂うラストは生涯心に残るだろう。このシーン、私にはかつての神戸市長田区長田神社での「つづら折りの宴」を思い起こさせる。95年の阪神淡路大震災の後、芸能者の端くれ(っつーのもおこがましいが、まったくもって)として参加させてもらったあの時の、生き残った人達の想いと、焼け残った土地の光景が、このラストシーンとだぶり非常に力強い説得力だった。こんな風に、見終わってから自分の中に何か新しい感覚が生まれる映画というのはそうそうない。
それにしても力の入った一本!松竹新喜劇、新派、新国劇からも客演を招くは、チョイ役でもビッグネームがぞろぞろ出てくる。若い時から婆さん役の北林谷栄の怪演ぶりったら凄まじいよね。杉村春子の存在感も素晴らしい。生前、この人の舞台を見る機会はとうとうなかったが「芸能者」ぶりがここからも伺える。本当に良い役者だ。田村高廣のボンボンもいい。適材適所!キャスティングの妙もお見事!こんだけの層の厚さ、深い造型の役者がいたということですなあ。