2001年12月1號『藍宇』答問大會
灣仔POV2書店PM9:00~11:00
出席者:監督/關錦鵬 脚本/魏紹恩 司会/舒[王其]
MTR灣仔站のA1出口を出ると目の前に有るこの書店。
舒[王其]が「両性文化」をテーマにした店である。店内には内外のゲイ、レズビアン、セクシュアリティ関連の書籍や映画VCD、DVDなどが並びいい感じ。この店気に入った。セクシュアリティについて語る事・・まだまだ日本でも成熟した文化とは言い難いが、香港なら尚の事という感は否めない。
さて、何だかんだでギリギリに飛び込んだ私。
店の入り口で舒[王其]と立ち話をしてる關錦鵬、発見。そう広くはない書店の奥にもう10人ほどの男女が集まっている。学生風な人が多いような?10分ほどして3人が登場。じわじわ見学者も集まって来たので、店員がさらに椅子を追加。おお、やっと座れた。のちに30人ほどにふくれあがるのだが(もちろん香港人しかおりません)・・・かしこまった空気はなく「まあ、もうみんな『藍宇』は見てると思うんで、何でも意見を言っておくれ」って事で開始。
以下、私が録音したテープを李嘯谷氏に訳して頂きました。私の廣東語レベルでは「何とな~く」は判っても詳しい事は全く聞き取り不可能です。
特別鳴謝 日本語翻訳:李嘯谷先生
Special Thanks !Translated By Mr.Jimmy.S.Lee
魏紹恩 |
私達は9月に中國へ行き、11月まで滞在した。その間2つの仕事をこなしてきた。 まず、台本を持って胡軍や劉燁らと読み合わせをし、それぞれ自分の役の部分を読んでもらった。 科白のやりとりがスムーズに出来るかどうかを試した結果、言葉の訛りに相違がある事が判った。胡軍は北京出身なので北京語に問題はなかったし、劉燁にしても役柄と同じく東北出身者がゆえに多少の訛りは仕方ないだろう。 二人に、台本を持ち帰って検討してもらうことにした。どう直せば自然に言えるか、との意見を聞いてから総合的な見直し作業に入る。その第二稿に更に北京の独特な風情を付け加えて第三稿を練り上げていくという感じだった。だから科白が北京語らしくない箇所があっても僕のせいではないんだ(笑)
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Q1 |
映画タイトルには多少腑におちない点があります。「藍宇」っていうのは片方の主人公の名前ですけど、題名にするのは不公平では?(笑)
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魏紹恩 |
僕も監督も『北京故事』という原題があまり好きじゃない。 物語の内容がほとんど伝わって来ないからだ。早い段階から却下と決めていた。 それからいい題名がないかなとずっと考えていた。
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Q1 |
『捍東と藍宇』ではダメだったのかな?(笑)
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魏紹恩 |
ストーリー全体に対して我々の見方ととしては、主軸になっているのが藍宇であって、捍東はあくまで藍宇を盛りたてる役と受け止めている。
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Q1 |
最初にタイトルを聞いた時こう邪推してたんです。「藍宇」の「藍(lam)」は「男(lam)」で「宇(yu)」は「乳(yu)」だと思った(笑)
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魏紹恩 |
ごめん、そこまで連想しなかった(笑)。せいぜい「宇」は「語(yu)」くらいで「男語」じゃないかと考える程度だったよ。
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Q2 |
私はwebで原作を読んだ者です。感想を言わせてもらいます。あなたの脚本は最悪でした(笑)。捍東から出て来る感情についての描写が非常に不十分です。
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魏紹恩 |
もうくり返し言っているんだけど、原作と映画とは同じものではないと私は考えている。
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Q2 |
それってあまりに不公平じゃないですか?
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魏紹恩 |
こちら側がそう決めて、台本に沿って撮ったまでです。 異なる意見を持つのは結構。だが、それを我々に押し付けてもらっちゃ困る。
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Q2 |
いいえ、そういう意味で言っているんではなくて、どうしてあんなに酷いものになったか知りたいだけです。
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魏紹恩 |
じゃ、どう描写すれば正しいかを教えて下さい。
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Q2 |
そうね・・・・原作に忠実に撮ってくれればきっともっと感動的な作品になったと思います。
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魏紹恩 |
よく判らないけど、忠実にっていっても個人差があるでしょう。 重点をどこに置けばいいとお考えですか?
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Q2 |
原作では捍東が第1人称になっていて、その語り口によって藍宇のイメージが浮かんでくるんです。映画は、ストーリーが逆に藍宇から展開する。それで完全に別物になってしまったような気がしてなりません。
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Q3 |
違います、映画を通して見れば捍東の描写だって少なくなかった。むしろ藍宇より多かったじゃないですか?(笑)やはり捍東の中心的な役割は失われていないと思います。 原作だと藍宇のキャラは受け身すぎたから、映画くらい個性を持たせても悪く無い。原作にあるような主観的要素が多少減殺できて、客観的で違った次元を見せてくれて良かった。映画と原作それぞれ違うんだから分けて考えましょうよ。
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Q4 |
今公開されてる映画はすでに大幅にカットされてるものですよね?
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魏紹恩 |
いや、そうとは言えない。誤った先入観をお持ちなのでは?今の言い方だとまるで成品が出来上がった後に壊さなければいけなかったみたいだけど、それは違う。たくさんの場面を撮ったけど、それを全部使うのは無理だろう。
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Q4 |
お言葉ですが、やはり数カ所についてはバラバラの感じが否めない・・・・。
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魏紹恩 |
それは私としては何とも言いがたい。作った当事者だからね、客観的に見れないかも。
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Q4 |
脚本家として、せっかく書いたものが切られてしまうことに抵抗はないですか?
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魏紹恩 |
製作の全課程に携わってきた者として、そういう感情はない。作品の最終的な出来具合が最優先だからね。編集作業には色々な要因がからんでくるので、それらを踏まえていかなければ良い作品が仕上げられない。 見方を変えてみよう、独立したシーンがいかに上手く撮れたとしても、映画全体の流れに合わない限り使うわけにはいかない。時にはカットする勇気も必要なんだ。 例えば原作では、藍宇の死後に初めて自分の為に北欧を売った事を知った捍東が深く心を打たれる場面があるが、映画の流れに配慮して、別の処理で対応した方がいいと思い書き換えた。また別の場面では、捍東が出所して二人で雪の荒野を歩き、ベンチに腰を降ろして、こんな馬鹿な真似はもうしないだろうな、と藍宇が言った後に歌を歌えと捍東が言い返した・・・・。今となってはこのシーンも悪くなかったと思うようになったなあ、少しは残念な気持ちもある(笑)
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Q5 |
人情味あふれるようなシーンは他にいくつかあります、例えば一緒にお風呂に入ったり、取れたボタンを付け直したりする所は良かった(笑) 一見なんでもないような所だからこそ、日常的に二人の間に存在する感情が伝わってくる。良かったと思います(笑)。
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魏紹恩 |
かなり思いきった編集方針がとられている。しかし、その基準は「大胆さ」にあるのではない。見れば判るでしょう?(笑)
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關錦鵬 |
そのシーンはほんの1分程度で、二人の間での感情的交流がかもし出せれているんじゃない。
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魏紹恩 |
ボタン付けっていうのもそう。女性の持ちそうな気遣いって、男性同性愛者にあってもおかしくないんだ(笑) 家に一緒にいる時、料理を作ったりもするでしょう。生活感はそこから滲み出るんだ。個人的には捍東が藍宇にマフラーをまいてやるシーンが一番好き。
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關錦鵬 |
監督としての意見を言いますと・・・・映画を作り上げる過程の中で皆それぞれの役割分担にこだわりを持っているに違いない。役者は役者、脚本家は脚本家、もちろん監督は監督なりの見方というものがある。さまざまな感情が飛び交ってるんだ。
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Q5 |
一番大事なのは二人の主人公の視線だと思います。科白以上に多くを物語っていたと思います。
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關錦鵬 |
上手く表現出来てたと思うの?
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Q5 |
最高でした!まるで電流が二人の間に流れているみたいだった。完璧です。お金のやりとりでは得られないものがそこにあって、暖かくて、感動せずにはいられなかった!
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關錦鵬 |
その通り(笑)
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Q5 |
世間では同性愛のことをただの「嗜好」と思われますよね。 実際はそうじゃなく、真剣そのものだってケースもたくさんあるんです。残念ながら藍宇が最後に死んでしまってハッピーエンドにはならなかったけど・・・・あれは同性愛はやっぱり悲劇だってメッセージを・・・・。
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舒[王其] |
ちょっとセンチメンタルな見方ではないでしょうか。
賛否は問いません(笑)
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Q6 |
捍東が結婚する、その前後のシーンなんだけど、やや混乱ぎみではないでしょうか。初めて見た時に事実関係の順序が判らなかったんです。 今うかがった話で出所のシーンはカットされたそうで、それはそれでいいと思います。
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舒[王其] |
感想ありがとうございます。
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魏紹恩 |
張永寧氏が、小説をまず私に見せてくれた。 彼は關錦鵬とはまだ面識がなかった。 それから持ち帰って一晩中二回も読み返した。長かった。 皆の気に障るかもしれないけど、正直大して良い小説と思えなかった(笑)。感動的な箇所はあるけど、それほどじゃない。私が一番気になったのはストーリーの時空性だった。あの場所であの時期にああいうことが起きていたという事が新鮮だった。張氏に報告して、だったらやってみないかと勧められ、本格的に開始して三週間後、第一稿が完成したんだ。
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舒[王其] |
脚色の際に、重点はどのへんに置きました?
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魏紹恩 |
基本的には、北京という場に限定しておけばいいと思ってるから余りプレッシャーは感じなかったよ。二人の主人公が出会って別れ、再会してまた別れ、再々会してまたまた別れるという構成が頭の中で出来た。しかし、1本の映画で10年という時間を収めるのはとうてい無理だから、最初からいくつかの場面は切り捨てていく事にした。 ゲイの映画だから女が泣くシーンは不要だ(笑)
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Q7 |
この映画は3本目の作品ですよね?それまでの2本は比較的マジメで正統派だったのに、なぜ今回はこういうテーマに挑戦するようになったんですか?何か心理的変化でもあったんですか?
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魏紹恩 |
別に。楽しいからやってるだけだよ。過去にどんな作品をやってるかは特に関係ないんじゃない。
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舒[王其] |
配役について聞きます。劉燁は実に不思議な子です。たくさんの顔を持っている。昔、上海でもそういう役者がいました。 監督から聞いた話だけど、最初にプロフィールに付いてた写真が17歳の時のものだったそうで、面接して会ってみたらまるで別人。長髪で身だしなみが全然なってなかったらしい。映画の冒頭に出て来る姿と、最後の方のスーツ姿とはどう考えても結びつかない。 もう一つは、捍東のホテルを訪ねて、彼がマッチョ男と一緒にいるのを見た瞬間の顔が日本のSMAPの中居正広に見えてしまった(笑) そして試写会の晩に会った彼は、ショートヘアでまた別人。香港の役者の中にはなかなか見当たらないタイプでした。出来れば役者選びの際の話を。
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魏紹恩 |
監督とあちこち役者探しに奔走していた。たまたまあるベテランADさんの紹介で劉燁の事を知った。 しかし例の写真が4年も前に撮ったものだなんて誰も気付かなかったよ。彼は非常にプロフェッショナルで、与えられた役柄をそつなく即興で演じてくれた。 捍東と藍宇の候補者がそれぞれ2~3人いてペアで組み換えてテストを行った。
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舒[王其] |
カメラは回してたんでしょうか?
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魏紹恩 |
いや、カメラなし。リハーサル感覚でその場の出来栄えだけを見た。 劉燁の演技が一番光ってたね。脱帽した。 それと、藍宇が捍東より背が高くなってしまったのは・・・・最初の段階では逆だったけど実際に胡軍と劉燁を並ばせたら劉燁の方が身長が高かったんだ。それはそれで仕方ないし、支障もない。 最終的に決まったのが9月6日だと思う。
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舒[王其] |
その時には脚本の最終稿はもう出来ていた?
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魏紹恩 |
そうかな(笑)
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舒[王其] |
ここで告知があります。 今度の5日、水曜日に劉燁と胡軍が台湾金馬奨に出席する為、香港に立ち寄ります。 23時からパーティーが開催されます。有料ですが一緒に写真も撮れますし、チャリティーイベントなんで、是非参加して下さい。 |
Q7 |
映画の主題歌ですが、最初から決めていたものですか?
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魏紹恩 |
そうです。この曲知らないの?(笑)
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Q8 |
何か理由でもあるんですか?
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魏紹恩 |
気に入ったからです。歌詞もバッチリだし。
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Q8 |
メイクについてちょっと文句があります。劉燁のメイクは酷すぎませんか?
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魏紹恩 |
それも事情があるんだ。当時、劉燁は他のドラマをかけもちしてて、いつも寝不足だった。その上本人の不注意かどうか知らないけど肌の手入れが悪くて、メイクしないとダメだった。 さっき彼は色んな顔を持ってるって言ってたけど、そのせいかもしれない(笑) 演技の調子よりもお肌の状態の起伏がとても激しいんだ(笑)
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Q9 |
日程がかなりつまっていたのでは?
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魏紹恩 |
まあ、かけもちだからね。大変だったでしょう。
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Q9 |
でも、藍宇の豊かな表情変化は素晴らしかった!
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關錦鵬 |
それが単なる過密な撮影スケジュールのたまものだったのか判らないが(笑) 憔悴しきった顔は絶品だったよね(笑) 女性と違って化粧の濃淡によって誤魔化すのが難しい。ある意味では雰囲気が役者によって醸し出されたもの。こちら側が与えたのは台本と衣装とセットのみ。
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Q9 |
彼と胡軍は、中國での人気はどのくらいだと思いますか?
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魏紹恩 |
知らないし、気にして無い。
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Q9 |
主人公についてはどう思いますか?
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魏紹恩 |
死なせるかどうかについて真剣に考えていた。
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Q9 |
あれだけ原作小説を弄ったのに、エンディングはそのまま死で結ぶのが意外でした。結局、観客を泣かせる為なんですね。
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Q10 |
主題歌に合わせる為じゃないの?
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魏紹恩 |
言われてみれば・・・・。
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Q11 |
ある新聞ではこんな映画評がありました。藍宇は粤語長片の中の呉君麗にそっくりだって。それは製作意図と一致してるんですか?私はその評に賛成してるんですが(笑)
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魏紹恩 |
捍東のために藍宇が特に何か犠牲にしてるとは思わないけど・・・・。
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關錦鵬 |
儲金してやった事は?
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Q9 |
他の新聞では、これは風俗の関係にすぎないって。 売る側が買う側を好きになって、様々な不幸に会う。個人的には原作を読んだせいか、捍東の藍宇への接しかたには許せない部分がありすぎます。
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魏紹恩 |
それも段階によって変化するものです。初めは紛れもなく金銭売買で肉体関係だけだった。捍東からしたら、金で買ったんだから遊んで当然。道徳的にどうこう言う以前にそういう事実がある。そして別れて再会する。二人の間にも確実な何かが出来上がりつつあった。藍宇だって金が必要だから体を売ったまでで、損だとは言えない(笑)。中國では風俗は「売淫」という記号にしてしまったが、これじゃ人聞きが悪い。でも昔から制度の束縛で本物の恋愛は風俗の場でしか求められないのではないか。風俗から始まり、恋愛が生まれてもおかしくはない。また天安門事件を境にその感情に変化が見られるのも、潜在する理性がそう促しているからだ。記念日みたいなもので、あの日が象徴的だったんだ。
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Q11 |
藍宇のキャラクターについて、彼はもともと同性愛者なのか、それとも捍東に出会って開発されたのか(笑) 前者だったら藍宇は凄く得してるし(笑)私達としては彼が体を売る動機が気になるポイントなんです。
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魏紹恩 |
自分で客を選べるわけじゃない。女だという可能性もあるし、お金がなければ相手が女客でも売らねばならない。それほど重要な点じゃないよ。
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Q11 |
その後、女客も取ったりするって言うんですか?
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關錦鵬 |
その趣向はないし、方向性ははっきりしてると思いますよ。
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Q12 |
撮影は慌ただしかったのでしょうか?
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魏紹恩 |
昼も夜も関係なく、必要に応じて撮っていた。普通ですよ。
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Q13 |
上手く進みましたか?最初にNGが多かったりすることはありませんでしたか?
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魏紹恩 |
9月から二ヶ月にわたる準備期間を経てから本番に入ったので、お互いの意志疎通がある程度は出来ていたと思う。何ら問題はなかった。
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Q13 |
ラブシーンは?
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魏紹恩 |
クランクイン早々にホテルでのベッドシーンを撮った。 カメラ位置を確認し、テスティングを行ってから、さあ脱ごう、と言って開始。スムーズだった。逆に今度は何でもないオフィスのシーンで胡軍が何故か芝居が出来なくなって、別室で2時間も役づくりの為に話し込んでいた。 劉燁にも手こずったシーンはあった。台所で別れ話しをするシーンで、彼はいきなり大泣きしだした。それは違うと伝えると、彼はすぐに要求どおりにやってくれた。そういう所は胡軍よりも臨機応変に対応する才能がある。 |
Q13 |
空港で捍東が叫ぶシーンには結構時間がかかったと聞いたけど。
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魏紹恩 |
そう!それがクランクアップのラストの方のシーンだったんだ。終わったら牡蠣を食べに行こうって言ってて、監督もかなり胡軍にプレッシャーをかけてた(笑) 北欧で別れてから4年たって、商売も上手くいかずに海外から帰ってきて、おまけに離婚した後・・・・色々な事が混ざりあっていて相当に複雑な心理状態だから、そう演じやすいものではなかった。
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Q13 |
捍東の妹と義弟が始めから兄と藍宇の関係を受け入れているという設定ですか?刑務所でのやりとりを見ていると妹夫婦は何ら違和感なく二人の事を語っているように見えますが。
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魏紹恩 |
ま、状況も状況だからね。切羽詰まっているなかで大金をポンと出してくれる人がいれば、誰であろうと受け入れてしまうでしょう?それほどロマンティックに考える必要はないと思う。積極的に認められるかどうかはまた別問題だから(笑)
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Q13 |
藍宇の表情がとても女性的です。監督の演技指導の賜物ですか?
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魏紹恩 |
自然な表情なんじゃない?それより、最初に台本が出来たときに關錦鵬に見せたら「自分が藍宇をやりたい」って言い出した!(笑) じゃ、一体誰が監督をするんだって事になって、やっと降りてくれたよ(笑)
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Q13 |
すべての出演者はオーディションで見つけてきたんですか?
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魏紹恩 |
そうだよ、厳選してきた。
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舒[王其] |
原作者に会った事はないんですか?
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魏紹恩 |
そう。誰もその人の事を知らないって言うから。
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舒[王其] |
印税の支払いはどうするんですか?
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魏紹恩 |
本人が20歳台の少女で、お母さんが換わりにお金を受け取ったらしい。
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舒[王其] |
そんな話し誰が信じます?
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魏紹恩 |
噂はまだ沢山あるよ。「翻訳小説」説もあるし・・・・。
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Q14 |
捍東と藍宇の再会の場所だけど、映画では空港になってますけど原作ではホテルですよね?原作の設定を嫌ってたんですか?
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魏紹恩 |
あまり覚えてない(笑)。さっきも話したけど、最初に原作を入手してその晩に二回読んで、そして撮影前にもう一回読んだだけだから、細かい部分まで覚えてない。
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Q14 |
原作では前後7年余りしかたってないのに、映画では10年になってるし、結婚して1年ちょっとで離婚したはずなのに、映画では長くなってます。かなり創作が入ってるんじゃ?監督の許可は得てますか?
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魏紹恩 |
出来上がった脚本は見せてます。
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Q15 |
張叔平がどのくらい関わっているんでしょうか?彼の影響がかなり強いと感じるんですけど。
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魏紹恩 |
美術や、出演者のイメージ作り担当です。
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Q15 |
映画を見て不思議なくらい感動したんですが、よくよく考えてみると二人の主人公に感動させられたのではなく、そこに現われている政治の推移に心打たれたんです。「中國」そのものに対する思いが僕の中で急に強くなってきた。 周知のように香港の映画は政治を正面切って語ってはダメだ。この映画は、政治的な論議をしていないにもかかわらず様々な側面から政治に触れています。建築ラッシュの北京がよく映っている。破壊がなければ新生もない、というメッセージかどうかは判らないが、興味深いです。
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魏紹恩 |
例え語らなくても「政治」は常に我々の生活の中にある。激動した時代においては庶民でさえ否応なく影響を受けている。
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Q16 |
捍東と藍宇の初対面シーンで、藍宇は捍東にこう聞いた「アメリカに行った事がある?」って。何か特別な意味があるんですか?行って来た方がいいんですか?(笑)
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魏紹恩 |
テレビでアメリカ関連の番組が流れてたから(笑) 確かに藍宇はアメリカに一種の憧れを抱いている。だからこのシーンを入れたのかもしれない。余り深く考えないように(笑)
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Q17 |
北京政府から何か圧力はなかったですか?封切りに辿り着くまで警告など受けませんでしたか?非公開撮影だと聞いたんですが。
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魏紹恩 |
今現在、公開した後も、国内への行き来には不自由がない。大丈夫でしょう。
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Q18 |
今度の映画祭(台湾金馬奨)で賞を取る自身は?
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魏紹恩 |
皆さんはどう思います?(笑) 結果を予想するのは難しい。投票制じゃないから審議の結果を待つしかない。票読みはまず不可能でしょ。
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舒[王其] |
お上の方から何か言われた事は?
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魏紹恩 |
ほとんど聞かない。 ただ一つ、カンヌに胡軍が行って来て、北京に戻ってから多方面の取材を受けて、かなり自由奔放に話した後、上の電影局の関係者に呼ばれて勧告されたと聞いた。 その後彼がどうなっているか判らない。
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舒[王其] |
(胡軍は)どんなビザで行ったんですか?
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魏紹恩 |
「文化交流」ビザだった。
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舒[王其] |
脚本作りの過程は順調でしたか?
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魏紹恩 |
圧力が全然なくて書きたいように書けたと思う。三週間で第1稿が出来たんだ、速い方でしょ。
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Q19 |
他の題名は考えてなかったのですか?
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魏紹恩 |
『藍宇』は仮タイトルだったんだ。しかしカンヌに出品する為に早く決めないといけなくてそのままにした。原作のタイトルは好きじゃないし、香港で映画公開するのにも似合わないと思ったし。
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舒[王其] |
中國で、よく出資してくれる人を見つけたよね。
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魏紹恩 |
中國にもゲイが大勢いるでしょ(笑)しかも金持ちで(笑)
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Q19 |
噂によると「完全版」が存在するそうですが・・・・。
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魏紹恩 |
絶対にアリマセン!!!
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Q19 |
冒頭のシーンでいきなり劉燁の全裸でしょう、何か意図があったんですか?
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關錦鵬 |
そうだね、そこで肉欲の関係というのを強く植え付けたかった。
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Q20 |
検閲なしでの撮影だったわけですが、編集工程はどこでやったんですか?中國国内、それとも香港?
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關錦鵬 |
その話はやめようよ(笑)
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Q20 |
藍宇の心理描写に関してもう一度聞きたいんですけど、金銭売買での肉欲から始まり、恋愛へと変化して終わったと理解したんですが、そんなに合理的にいきますかねえ?二人とも打算的だったんじゃないでしょうか。ただ割合が減っただけと僕は思うんです。流れでなるようになった様にしか見えない。
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關錦鵬 |
男女の付き合いでもそう純粋にはいかないでしょう。相手が美男ないし美女だから多少高い代償も惜しまず迫る事がよくある。単なる商取り引きだったらそう長くは続かない。 また、当時の北京はまだかなり保守的だったと思うね。よく判らないけど。金を出してお願いする以外に相手を見つける方法がなかったんじゃないかな。始まりは何であれ、感情の積み重ねがなければ恋愛には発展しなかっただろう。
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Q20 |
何か北京のゲイ事情について調査したんですか?
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關錦鵬 |
何にもしてない(笑)
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Q20 |
藍宇が捍東に惚れるのは良しとしても、捍東が本気で藍宇に惚れたというのはちょっと納得いかないです。キャンパスであんなに慣れた手口でマッチョ男を誘ってるくせに、愛なんて言う資格があるんでしょうか。もっと説得力のある証拠を見せてほしいです。
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關錦鵬 |
証拠不十分では愛は成立しない?(笑) 恋愛ってそんなに理性的に片付けられるもんじゃないよ。恋に落ちる前はこう、なんて理由付けを考えていても、実際に目の前で自分の不条理な行動を見てれば否定したくても出来ない気持ちがそこにあるでしょう。 二人の過ごした時間が全てを代弁してくれたと思う。捍東が結婚したのも恋愛感情だけでは説明がつかない。だって男同士では子供が作れないし。
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Q20 |
捍東はバイセクシャルなんですよね?
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關錦鵬 |
それは間違いない。映画のイントロでの会話を通しても判るように、彼は女とも寝ます。
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Q21 |
天安門事件の夜が二人のターニングポイントだと言うけど、私はもっと前だったような気がします。ホテルのエレベーターから呼び戻そうとした時点で確信が得られているような・・。
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魏紹恩 |
しかし、エレベーターの扉が閉まった時、捍東は藍宇を追いかけていこうとしなかった。心の中で重要な位置を占めることが確信できても行動にはでなかったんだ、天安門事件の晩までは。
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Q21 |
今後中國の役者さんとのコラボレーションは増えていくんでしょうか?
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關錦鵬 |
それは作品次第だと思う。交流はおそらく盛んになるでしょう。
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Q21 |
ギャラについて、中國の制度は香港と異なっているんですか?
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關錦鵬 |
ギャラの話はやめようよ(笑)
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Q22 |
二人の間に男女の役割分担が存在する、と設定されてるんでしょうか?それが気になって仕方ないんです。
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關錦鵬 |
それは別に考えてない。二人の経済的な差はあまりに大きすぎるので、強弱関係が自然に出てしまう。男女の交際でも持っているほうが出すのが普通でしょ。たまたま女側だったりする事もあるし、とにかく男同士の恋愛には男女の役割分担がどうしてもあてはまらない。微妙に違うから。もっと厳密に言えばカップルそれぞれが違う固体でしょう。男女でも男同士でも女同士でも、枠組みで分類しきれるほど簡単なもんじゃない。
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Q22 |
しかし藍宇の表情があまりにも柔らかいので、どうしても連想してしまいます。
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關錦鵬 |
ソフトな性格は女性の専売特許ではない。まして二人が両性のどの役割を担っていようが、愛の本質とは関係ないし、輝きは失われないはず。
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Q22 |
いったい恋愛映画を作りたかったんですか?それとも男同士でも恋愛するんだ、と言いたかったんですか?
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關錦鵬 |
お好きなように解釈して下さい。無理に合わせてくれなくてもいいよ(笑)
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Q23 |
確かに男女の恋愛ものとしてもこの映画は成立する。でもそれはもはや別の物語になってしまう。恋愛の形は千差万別で、性の役割分担を追求したところで何の意味があるんだろう。
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魏紹恩 |
人それぞれ自分の観点で楽しんでくれれば・・・・。
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舒[王其] |
じゃあ、他に質問がなければ、ここに一通のFAXを預かってます。この方は今夜ここに来られないので、これを無駄にしない為にも私が代わりに読みます。
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關錦鵬 |
(ゲイでない役者を起用する点について)何ら抵抗はない。プロ意識こそが評価されるべき点だ。
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魏紹恩 |
ご意見ありがとう(笑)
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舒[王其] |
それでは『藍宇』ポストカードセットを配りますので・・・・。 |
⬆︎關錦鵬が監督した『藍宇』(原作はインターネットのゲイ小説『北京故事』)では、シナリオを依頼されるも、出来上がった脚本が「あまりにも北京的すぎる」との理由から採用には到らなかった。
※無断転載、無断引用禁止