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英国から来た『メイド・イン・朝鮮』

英国から来た『メイド・イン・朝鮮』グラフィックデザイン展

前回(今年の1月末から2月にかけてのソウル旅で)このデザイン展を見る予定でいたのだが、体力がなく諦めた。
今回は絶対見に行かなければ!

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ニコラス・ボナー(Nicholas Bonner)という英国人が25年間かけて収集したDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)の切手、包装紙、カード、プロパガンダアートポスターなど200点余りを展示している。
DPRKのグラフィックデザイン展は2018年春に英国のイラストレーション専門ギャラリーであるHouse of Illustrarionで初めて公開され、韓国は世界巡回展の最初の国に選ばれたそうだ。

ニコラス・ボナーは英国で園芸学を専攻し1993年に初めてDPRKを訪問した。
その後、北京を拠点にしてDPRK観光を専門とする高麗ツアーズという旅行会社を設立した。

日本からもDPRK観光旅行は出来るが、一度北京へ行き、北京からDPRKへ入国する、というツアールートですよね。

2014年のベニス・ビエンナーレで黄金獅子賞を受賞した映画『キムさんは空を飛ぶ』を共同監督として作り、ビエンナーレの韓国館のキュレーターチームの一員であるだけでなく、DPRKに関する3本のドキュメンタリーも制作しているというニコラス・ボナー。
『キムさんは空を飛ぶ』は2012年第17回釜山国際映画祭で特別上映されたそう。

では早速展示会場へ!

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⬇︎以下、会場内の展示解説の部分意訳と自分の感想を交えたものです。

DPRKはイラストレーションとデザインを国家が企画して承認する。グラフィックアーティストたちは国立大学で教育を受け専門スタジオで働いているという。
DPRKのデザインは社会に寄与するための活動として全ての面において政治的な教訓を表現する。
って、まあ大体どこもそうだけど。政治的ではない表現は皆無だと私は思っているので。音楽も映画も小説も絵画も漫画も、私たちが生活するすべてが政治の影響を受けている以上「政治的」なのだし、政治と生活を切り離して考えるのは危ない。

 プロパガンダアート

プロパガンダポスターは1945年の南北分断後、DPRKで政府が社会的・政治的なメッセージを人々に伝えるために使われてきた。
ポスターアーティストたちは政府が運営している共同スタジオで働いている。
平壌にある「万寿台アートスタジオ」の規模が最も大きく、多様な分野の芸術家を約1,000人程雇用している。ポスターのアーティストは政府の指針を手作業タイポグラフィと理想的な市民たちのイメージで表現する。
初期のポスターは朝鮮の伝統とソビエト時代、ロシア芸術の影響を受けて、一番最近のデザインは大胆な色、様式化された形やDPRK固有の動的なレイアウトを使用する。

1975〜2008年に作られたデザインは農業、漁業、及び工業生産に基盤を置いている。
ポスターは商業広告のように食糧や商品の消費を奨励するよりは「人民」の利益のための生産を奨励する。
まずはデザインが承認されれば、カラーコピーやコピー印刷物が全国の公共の場所に配布されるよう製作される。手描きの看板も多い。
実際に近くで見るとはっきり分かる手描き作品。昔の映画の手描きポスターのようなあの感じ。

DPRKのグラフィックデザイナーは大学で教育を受けた後、全国各地にある会社で働く。その中で一番大きく権威のある会社は、平壌にある産業アートスタジオ。社内デザイナーがいるスタジオと工場は政府で所有し、すべてのグラフィックデザインは政府の承認を受ける。したがってデザインの新しい実験、変更、及び開発は慎重でなければならない。

しかし、この中央集権制度にもかかわらず、飲食物及びその他品目の包装は統一された形式ではない。地域ブランド、国内市場及び海外の観光客を狙った製品は多様なグラフィックを使用する。

2000年代半ばまでグラフィックデザイナーたちは外国のグラフィックデザインのドローイング、アナログデザイン過程を学んだ。DPRKの政治的、文化的なモチーフや伝統的な色彩を使用している。

ここで思い出すのが文化大革命当時の中國のプロパガンダアート。

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左:1984年発行。右:1997年発行。
当時、潮田島尾両氏の撮影する中國のキッチュな生活雑貨やプロパガンダアートの世界が大好きで、出版されるムックを何冊も読んだ。
1980年代は原宿に中華系雑貨のショップ大中もオープンして、よく通ったなぁ。まさにあんな感じ。

日常生活用品

1950年代以来、自立的な国家への野心と抱負はDPRK政府政策の基礎となった。
このため、ほとんどすべての製品が国内で製造された。
デザイン、印刷及び生産物はデザイナーと製造業者によって国内で引き続き生産されている。

特にDPRKの人々は子ども時代から指導力、国家及び社会に対する重要性について学ぶ。政府宣伝は人民に「もはや他国を羨ましがることはない」とDPRKがすべての国で一番だという共通認識を注入する。グラフィックデザイナーたちはこの考え方を反映して革命的、産業的、自然的アイコンを表現する。

政府機関の象徴と伝統的なモチーフは身近なデザイン要素だ。切手とノートのような日常用品にこのようなイメージデザインを持続して使用することは、すべてのDPRKの人々がその重要性を理解できるようにするためだ。
漫画はいわゆる「劇画」調。
軍事物でアクションと冒険ストーリーが主流。

平壌エンターテインメント

DPRK政府は市民たちにエンターテインメントを提供する。
国営施設では映画館、スポーツ競技場、サーカスや劇場がある。2007年に開かれたDPRKの「集団体操と芸術公演(マスゲーム)」は、DPRKの国内外の来賓や観光客全員が出席した世界最大規模の体操競技だった。

ポストカードとプログラムはスポーツや国家行事と朝鮮の文化および自然名所用の記念品として制作される。肖像画、建築や造園の写真は主にブロックの色と手で表現されたタイポグラフィが使われる。

今日の平壌

平壌で生活するDPRKの人々の日常を映像で紹介。
彼らが実際に食べて飲んで使用する製品を見ることができる。
2000年代半ば以降、全て手描きのアナログ作業だったグラフィックデザインは次第にデジタル作業になった。
現在のDPRKのパッケージはアジアの他の国でも見られる平面ブロックの色と柔らかいベクトルグラフィックが特徴だ。このような美学的変化は新しい技術の可能性を示すための目的とともに、外国ブランドと同じ水準を維持しようとした結果である。

 平壌スーパーマーケット

展示の最後にある「平壌スーパーマーケット」という物販コーナーはいわゆる「DPRKっぽいデザイン」商品なので実際にDPRK製品を販売しているわけではない。
「平壌スーパーマーケット」は南北が統一された際にともにコーヒーを飲みながら、買い物をして、文化を楽しんで、自分たちだけのライフスタイルを作っていくDPRKの人々の姿を描いてみようと企画されたライフスタイルポップアップストアプロジェクトだ。

「これらのコレクションはDPRKの最も創意的なデザイナーたちが手描きした美しいグラフィックを元にした、日常的なオブジェだ。
精巧さの中にある基本的なデザインを見逃してはならない。
なぜならミニマルな単純さこそがリズム感のある美しい芸術作品を創るからだーニコラス・ボナー」

2018年に見たドキュメンタリー映画『My brothers and sisters in the North』
映画の中で、DPRKの縫製工場内を取材している。
この縫製工場で作っている洋服は海外に輸出されているが、国交のない国では販売できず「Made in DPRK」の表示タグをつける事ができない。いつか世界中で「Made in DPRK」の服が販売される日がくるといいな…という場面がある。
あ、そうか。もしかしたらそうなのかもしれないと気付いた。
今「Made in ●●」のタグがついている服は、実は「Made in DPRK」なのかもしれないと気付いたんだよな。
私たちは既に「Made in DPRK」の服を身につけているのかもしれない。

全体的にピンク!ポップでキッチュでレトロなアジア雑貨店みたい。
このグラフィック展のプログラムやマスキングテープやピンバッヂ、シールにポストカードに…とつい手にとってしまった。
前述の中國文革時代のプロパガンダアートにしてもそうだが、ソ連時代の同アートや、旧東ドイツ(ドイツ民主共和国Deutsche Demokratische Republik)のオスタルギー雑貨などが好きっていうのと同じように「かわいい」し素敵だ。
だがしかし。
そもそも朝鮮半島はなぜ南北に分断されたのか。
いまだに「北朝鮮」を邪悪な独裁国家として扱い(DPRKが独裁政権へ走ったのはなぜなのかっていう所は丸ごと無視して)朝鮮学校の修学旅行生からお土産を没収した嫌がらせといじめのニュースも記憶に新しい。

侵略、虐殺、加害の事実を認めず謝罪もしないままの厚顔無恥な日本。戦争主犯の一族がのうのうと「象徴」になっちゃってるような日本。
日本人である私が「キッチュでかわいい」からってこれらを消費しちゃうのは、宗主国根性っていうか、あまりにも無責任じゃあないのかなーーーとモヤモヤしてしまったんだが……
これらDPRKのグラフィックアートを呑気に楽しんじゃっていいのかなー。
日本に住んでいる日本国籍の日本人という「特権」を持つ私がそれをしていいのかなーー。
なんてモヤモヤしながらもグッズや図録を購入しちゃったんだけどな…。

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⬇︎以前にも書いていますが、私は自分の間違いに気付いたのでそれ以降はDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)を「北朝鮮」と呼んだり書いたりしていません。
むしろ頑なに間違った名称を使い続ける事に「悪意」を感じてしまう。それが例え「無意識」であったとしても、だ。

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