DoubleMintGum

I'm a Feminist,Shipper,Slasher and Fan girl.

Double your pleasure Double your fun,With Doublemint Doublemint gum.

金門王&李炳輝

『流浪到淡水』1997

『来去夏威夷』1999

『FORMOSA2000』2000(魔岩唱片)

      

 「これは絶対に私が好きな音に間違いない」根拠のない確信を持って、ジャケット買いしてしまったCDが、まさかこれ程の大当たりとは。
1曲目の『流浪到淡水』が始まった途端にヤラレてしまった。
「乎乾la!(ホッタラーと聴こえる・・)」台湾語で歌っている。くう、たまらん。
   後から知ったのだが、この曲はキリン・ビールのCMソングになって、台湾では大ヒットしたらしい。判ります。私もビールを飲む度にこの歌を思い出すようになってしまったから。
  『流浪到淡水』のアルバム・ジャケットに写っているのは、二人のオヤジ。
一人はアコースティック・ギターを持っているが、左手がない。
もうひとりはアコーディオン。咄嗟に連想してしまったのは「傷痍軍人」である。当たらずとも遠からずではあった。
    歌詞カードの「両個走唱人生的故事」を見ると・・台湾(実際は福健省になるんだよね)金門島生まれの金門王は、小学校六年の時、不発弾で左手と視力を失った。
ギターは独学(何と二週間でマスター。歌も一晩で6曲は仕込んでいたとか)。
桃園出身の李炳輝は、生後四ヶ月で失明。
二人は按摩師の学校の同窓会で知り合った。この時の李炳輝のハーモニカ演奏が印象的だったそうだ。「縁があって」流しを始め、基隆、台東、花蓮、などなど・・淡水を中心に台湾中の茶室 (お茶の席・・ではありません。風俗というか、水商売の店ですね)を流した。1975年当時で一晩の稼ぎは300元というから、かなりのもの。夜の街で、 二人の歌を聴いてみたかったもんだな。

  1枚目は、10曲中5曲をチャイナ・ブルーがアレンジしているが、もちろん誰もが予想していなかった意外なヒットをうけて、2枚目『来去夏威夷』ではジャケットのデザインもグッとオシャレになってしまう。街の檳榔屋の主も、香腸屋のシャチョーも、茶室のおネエチャンも大喜びというコメントが楽しい。
ここでも伍佰が2曲作曲。        

 彼らの歌からは台湾の匂いがする。土地に根付いた生命力、強烈に蠢く得体の知れない力。地を這うようにして生きて、歌ってきた者にしか出せない匂いがする。それは情念なのだが、どこかスコーンと抜けた軽さで、乾いている。
琉球民謡の嘉手刈林昌氏(故人。映画『ナビィの恋』が最後の勇姿)に似た乾きを感じた。
最新作『FORMOSA2000』に到ってもこの味は変わらない。もちろん、彼らの生活語である台湾語で歌い続けているし、 何より歌の中に笑いがある。
  1曲目の『FORMOSA淡水』最高っす。主にリードボーカルをとっているのは金門王氏の方だが、李炳輝氏の歌も非常に飄々としていて、特に『焼肉粽』や『獨身進行曲』が好きだなぁ。よく歌に台湾語の喋りが入るんだけど、それが楽しい。アレンジも多彩になっているが、歌の本質を損ねてはいない。参加ミュージシャンやスタッフが、二人の音楽に本当に敬意と愛情を持って接しているのが伺える。
台湾音楽の土壌の奥深さ、豊かさを感じるね。
今では、もう流しをする事もないという。来日した際は、大阪・釜ヶ崎で路上ライブをやったらしいが、その光景は正にアジアの吹きだまりだったのではないだろうか。ハマリすぎ。

ソウルフラワー・モノノケ・サミットとか、韓国のポンチャックとかインドネシアのダンドゥッドとかお好きな方にはお薦め。私が、今一緒に仕事したい人たちナンバル1!
金門王&李炳輝へ、長生きしてね。